遺産でもめるのは、たくさんの財産を持っている人が亡くなった時の話だろう。
私にはそんなに遺す財産がないから、私の死後、家族がもめることはないだろう。

そんな風に思っていませんか?
実は、私も行政書士になり遺言作成業務に携わる前は、漠然と「遺産分割でもめるのは、生前にたくさんの財産を遺した人が亡くなった時の話だ」と思っていました。

では、実際にどのくらいの遺産額の相続が、裁判所で調停や審判として扱われているのでしょうか。
下の円グラフを見てください。

この円グラフは、2020年に裁判所で扱われ遺産分割事件の認容・調停が成立した件数を、総遺産の価格別に割合で示したものです。
(遺産分割事件とは、相続人間で遺産分割協議がまとまらず、裁判所へ調停・審判が持ち込まれた事件のことです。)

※出典:「法務省司法統計_2020年度 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(「分割しない」を除く)」より作成

青色の「1000万円以下」が全体の34.7%、赤色の「1千万円超~5千万円以下」が全体の42.9%を占めています。
つまり、裁判所で認容・調停が成立した事件のうち、約4分の3(77.6%)が5千万円以下(青色+赤色)の総遺産額だったことを示しています。

「財産が多い」や「財産が少ない」は、あくまでも個人の相対的な感覚です。
『「財産が少ない」→「相続でもめないだろう」→「遺言書を遺す必要がない」』
と結論づけてしまうのは、少し早計かもしれません。

遺言書の作成を検討する際には、自身の財産の額だけではなく、遺される家族にどのような形で何を遺したいかを考え、そしてその希望を記しておく必要があるのかを検討することが大切なのかもしれません。